サ終が決まったスタオケを作ってるルビーパーティのネオロマブランドは、本当にオワコンなのか?

前置き。

どうも、スタオケでは御門浮葉様とグランツを推してるアラサー男子です。スタオケ界隈ではROM専に徹してるんで、普段は某アイドルソシャゲにいるんですが、どっぷりスタオケに浸かってる元同僚の友人から「このふせったーについて書いて、得意分野でしょ肉奢る」と言われて、肉につられて一応見に行ったところ、僕としても気になったことがあったので、筆を取ることにしました。
ちょっと職業柄、しつこく数字とか出してくるかもしんないんですが,適当に流し見してください(流し見面倒って人は、本題ってとこまで飛ばしてもOKす)

 

 

 

前提。

そもそもスタオケを出しているルビーパーティが、1994年に世界で初めての女性向けゲームとして、アンジェリークネオロマンスというジャンル名で発売したのは、スーパーファミコンででした。
乙女ゲーム」という名前が作られたのは、2000年代に入り、ガールズスタイルという雑誌によると言われてるんですが、これは当時人気が出ていたBLやBLゲーム、BLと乙女の両方を扱っているビーズログという雑誌との差別化をはかって、新たに作ったネーミングだったと記憶しています。
2000年代中頃から、元祖女性向けゲームのルビーパーティ以外でも、あらたにジャンル名称が作られるほど、女性向けの恋愛をテーマにしたゲームが増えていきました。オトメイトをはじめ、ハニービーやD3パブリッシャーなどが出てきました。
ルビーパーティが満を持してリリースした和物ファンタジー遥かなる時空の中で」は、1〜3、その番外編と大ヒットを飛ばし、乙女ゲームでは記録的な数字である4.5万本を記録しています(「遥かなる時空の中で3」PS2版)。
その背景に、コンシューマーゲーム機の黄金時代がありました。2000年代半ばは,据え置き機のPS2が全盛期の強さを保ちつつ、DSとPSPという二大携帯ゲーム機の同時的普及した、コンシューマーゲー最強の時代です。
2000年に発売されたPS2は、安くDVDを再生できるという理由でも爆発的に普及し、世界で1億5000万台以上売り上げました。
そして携帯ゲーム機のほうも、2004年に発売されたPSPは、7000万台出荷し(一番売れたのはモンハンシリーズ)。同2004年に発売されたニンテンドーDSは最も売れたゲーム機として、1億5000万台が出荷され、マリオ・ポケモンどうぶつの森などの大作を出しました。

 

先行して普及したPS2の圧倒的なシェアを足がかりに、さまざまなゲームが開発され、ジャンルも作られていきました。そのひとつが、キャラクターの魅力をメインにしたコンテンツであり、乙女ゲームです。2009年にはオトメイトの「薄桜鬼」が発売され,大ヒットします。
金色のコルダ」も2006年にリリースされ、翌2007年には「金色のコルダ2」PS2が三.五万本以上、「金色のコルダ2アンコール」PS2が二.五万本以上を売り上げています。

 

乙女ゲームのメインプラットフォームは、徐々にPS2からPSPへと移っていきます。たくさんのゲームがPSPで発売され,ルビーパーティの作品も次々とPSPに移植されました(2009年、遥かシリーズ・コルダシリーズ)。
この時期には、乙女ゲームの記録的ヒット作である「うたのプリンスさまっ」シリーズが発売されました(2010〜)。
ルビーパーティから始まった女性向けゲームは、乙女ゲームというジャンルを形成し、さまざまな他社レーベルが立ち上がり,グリーなどのブラウザゲーでもリリースされるなど,非常に活気のある市場となっていきます。
PSvitaが2011年に発売されますが、所持している乙女ゲームユーザーがPSPメインなのは明白だったため、乙女ゲームレーベルはPSPでのリリースをメインにし続けました。

 

 

そんな乙女ゲーム業界に大きな転換点が訪れたのは、スマートフォンの高機能化し、今でいう「カジュアルゲーム」以上の遊びにスマートフォンが対応しはじめた2010年代中頃です。

当時、携帯ゲーム機は、いまだPSP以降、大きな普及の気配はなく,「乙女ゲーム」と呼ばれたジャンルが、メインにしうるプラットフォームが定まらないままでした。

 

そうしているうちに、大きく頭角をあらわしてきたのが、スマートフォンをプラットフォームとするアプリゲームです。
特に、いわゆる「ソシャゲ」と呼ばれる、
①ガチャがあり、
②イベントと呼ばれる定期的に更新される期間限定コンテンツがあり、
③複数のキャラクターがいてキャラの魅力でユーザーを楽しませる
タイプのスマートフォンアプリは、アイドル文化という「推し」文化の台頭・定着とともに時代の申し子となりました。スマートフォンでいつでも遊べる手軽さ、短時間でも遊べる気軽さは、大きくシェアを伸ばしていきます。

 

当初は男性向け女性アイドルゲームが主流だったソシャゲも、アイドルマスターSideM(2014)やIDOLiSH7(2015)、あんスタ(2015)など、次々と女性向け男性アイドルゲームがリリースされました。これらの普及とともに、従来乙女ゲームをプレイしていたユーザー層にも、自然とプレイされるようになっていきました。
そして当然の流れとして、アイドルだけではなく、女性向けの恋愛が主題のソシャゲ(「スタンドマイヒーローズ」(2016)など)がリリースされ、人気を得ました。
こうして、多くのコンシューマー機で「乙女ゲーム」を制作していたレーベルが、スマートフォンという新たな(そして巨大な)プラットフォームに参入する前に、女性向けソシャゲは従来の乙女ゲームユーザー層はもちろん、潜在的にはユーザーとなり得た女性ユーザーたちの支持も獲得しました。(ここで「潜在的にはユーザーとなり得た女性ユーザー」とは、わざわざCS機を買わないけれどグリーなどのブラウザの乙女ゲームをしていた層や、少女漫画などを愛好していたゲームライト層を指します)

 

ソシャゲアプリの開発で遅れをとってしまった乙女ゲームレーベルの動きはさまざまでした。規模の大きな会社は、「コンシューマーでの新作を少数に絞りつつも続け、かつソシャゲ開発も試みる」戦略を取っています。例えばRejetは「剣が刻」をリリースしつつ、「剣が君」の移植を出しています。
ルビーパーティの戦略も、『人気のあるCSタイトル(移植や続編込み)を開発しつつ、ソシャゲに挑戦する』という大手乙女ゲームレーベルならではの対応だったといえます(小規模な乙女ゲームレーベルは、CSからスマホへの時代の変化で生き残れず、新作を聞かなくなったところも多数あります)。

 

ところが、スマートフォン覇権の時代が揺るがなくなったかに見えた2020年、世界に大きな変化が訪れます。コロナ禍による、「おうち時間」需要の発生です。
新型コロナウィルスという未知の恐怖と不自由で新しい生活様式は、世界的に自宅内での豊かな体験を求めさせ、結果、Nintendo Switchの売上は飛躍的に伸びました。「スマートフォン以降の時代に携帯ゲーム機が流行ることがあるだろうか?」という懸念を吹き飛ばし、スマートフォンという圧倒的優位なデバイスがあるにもかかわらず、5000万台ものシェアのある携帯ゲーム機がスマホと共存する時代が来たのです。

 

 

本題。

こうやって活路を得たNintendo SwitchというCSゲームのプラットフォームで、ルビーパーティがリリースしたのが、「遥かなる時空の中で7」、「アンジェリークルミナライズ」、「バディミッションBond」です。オトメイトなどの乙女ゲームレーベルが、過去の人気作の移植などを手厚くするなか、まず新作に挑戦したのは非常に意欲的だったと言えると思います。
そして、それぞれの売上は、「遥かなる時空の中で7」三万本(コーエーテクモIP資料より)、「アンジェリークルミナライズ」三万本(コーエーテクモIP資料より)、「バディミッション bond」11000本(ファミ通ゲームランキングより)。
PSVita発売以降、2万本を超えれば大ヒットと言われ一万本を越える作品もなかなか出てこなかった乙女ゲーム市場で、立て続けに二作も2万本越えの作品を出したのは、ルビーパーティのネオロマンス作品の強さを見せつける出来事でした。

 

 

ここで、ようやく件のふせったーの話です。
ここで言われていたのは、ルビーパーティのネオロマンス作品について、されていた指摘のいくつか、下記3点。


ナンバリングタイトルで「同一の世界観の中で攻略対象の世代が一新する」ってのがあるけど、それって長期的な商売していく上で弱みになってない?


ネオロマンスというブランドは【中略】
・主として顧客満足度の維持によってブランドを成立させてきた一方、新規顧客の取入れは積極的に行ってこなかった
(立ち絵も初出ゲームのものを改めずに使ってるので、若い人から見ると古臭く感じられて見向きもされない。でも変えると従来顧客から反発される

 

「ルビーパーティー」「ネオロマンス」というブランド名が足を引っ張ってる事態になってない?

 


まずは①。
あくまで売上データをもとに語ればですが、ルビーパーティが従来のネオロマンス路線で作った乙女ゲームである『遥かなる時空の中で7』は2020年に発売された乙女ゲームとしては圧倒的な数字である3万本を売り上げており,PS2やPSPの全盛期の数字にも匹敵するほどの売上なので、①の指摘は当たりません(イベントの開催しにくさはその通りですが、イベントの開催不可能性=長期的な商売をしていく上での強み、と短絡に結びつけません)。
ちなみに初動1.5万本だった『遥かなる時空の中で7』が結果的に3万本売り上げたことは、コーエーテクモのIP資料に(僕の主観で見れば誇らしげに)掲載されており、ルビーパーティのひさびさの快挙であったことがうかがえます。

 


つぎに、②。

ルビーパーティが今の時代の流行を取り入れ、「若い人が古臭くて見向きもしな」くならないよう、新生させた『アンジェリークルミナライズ』は、従来路線のネオロマンスアンジェリーク)のキャラデザや立ち絵・設定を改めていましたが、人気シリーズの遙か同様の売上である3万本を売り上げ、「従来顧客から反発され」ることもなく同等の支持を得ており、②の指摘にも、とくに根拠は見当たりません

 


そして、③。
「ここから先、「ルビーパーティ」や「ネオロマンス」というブランドを掲げることが、マイナスになるのではないか?」という指摘。
(ここが本当に気になっちゃって、いま仕事も放り出して書いてるわけですよ…)

 

「掲げるのがマイナスとなるルビーパーティの作品」としてあげられた「遥かなる時空の中で7」や「アンジェリークルミナライズ」の対比として、出されている「刀剣乱舞無双」ですが、そもそもが累計ユーザー1000万の巨大コンテンツとのコラボ作品であり、コーエーテクモが企業として推進している他社とのIP作品群のひとつであること、コラボ系無双作品はガンダムONE PIECEゼルダなど、計7作品あり、ルビーパーティのオリジナル作品と同等に扱い議論すべき作品ではないと思われます。

 

そして、もう片方の根拠として、出されていた「バディミッションBond」は、日本ゲーム賞で優秀賞をとるなど、ファンからも評価は高かったですし、またルビーパーティのボーイズゲームというジャンルでの開発実績、さらに任天堂とルビーパーティという開発の可能性が今後にも開けたという点では、大きな意味があったと思われますが、売上本数が11000本であったのは事実であり,ちょっとググれば見つかる情報をあえて伏せることで、ルビーパーティがこの令和の時代にもきちんと積み上げている実績を過小に見せ,サ終という悲しいニュースがあったときに、ルビパファンをディスカレッジさせるのは、本当にいかがなものかと思いました

 

それなりに乙女ゲーム業界の端くれで仕事させてもらって(言っとくけどシナリオとか開発とかのほうじゃないです)、ルビーパーティの丁寧で愛ある仕事のファンである僕としては、仮にもルビーパーティ作品の信者を自認する人が、「ルビーパーティやネオロマンスの名前があると足を引っ張る」とか「古臭く時代遅れだから見向きもされない」と、実際のデータにも基づいてもいないのに、一方的に書いたうえで、それが長く応援してきたファンや,新しくスタオケから入ってきてくれたファンの気持ちを損ねてしまう、ファクトに基づいた事実ではないのにファンの間で事実として誤認されてしまう挙げ句は「ルビパやネオロマって時代遅れなオワコンだったんだ…。もう好きでいたり応援しないほうがいいのかな」とファンに思わせ、それこそあのふせったーが示唆したように「シリーズの未来を狭める」かと思うと、見てみぬフリはできず、これを書いてしまいました(本当はここまでしたくなかったですが、波風立ててしまってすみません)。
それに、ファンでなく中の人の気持ちを考えても、いくらスタオケのファンで、ルビパがスタオケで「成し遂げたかったこと」を応援してる立場で書いているかといって、ルビーパーティとしてブランドを作ってきた人たちが、あそこまで自分たちの築いてきたもの、大切にしてきたものをサゲられて、素直に喜べるでしょうか。そこらへんへの思いやりも持って欲しかったです。

 

僕だって、もっと黒橡の活躍や、御門様のご実家の話とか、深掘りして欲しかったし、見たかったですし、無念だけどね。その後の大河と御門様の関係をクローズアップしてほしかったよ。マジで無念だけど。でも「古参と乙女ファン=有害な老害」「新規とボーイズファン=運営の今やりたいことを理解できるオタク」の図式に二分割して、勝手に自分まで同じ箱にいれられるのは、普通に気分悪かったので、言わずにはいられませんでした。焼肉は割り勘にしようと思います。

 

今後は黙ってROM専に戻ります。3月までのスタオケとの短い時間、お騒がせしてすみませんでした。楽しく悔いのないように、皆様もお過ごしください。

 

 

(※身バレを避けるために、多少フェイクは入ってます。悪しからず)